大切な住宅の建材を食い荒らす「シロアリ」ってどんな害虫?
実際にシロアリを見たことがある方はおそらく少ないと思いますが、ほとんどの方はその名前や住宅に使われる木材を食い荒らす害虫である事はご存じかと思います。実はこのシロアリ、普段は土や木の中でひっそり暮らしていますが、春先から梅雨にかけての数カ月間だけ、新しい巣を探して移動するために羽アリとなって地上に姿を現します。「…羽アリはシロアリなの?」と疑問に思われた方はいらっしゃいませんか?大切なお家をシロアリから守るためには、シロアリがどんな害虫か知っておくことがとても大切です。そこで今回は知っているようで意外と知らない、シロアリの生態や種類についてお話します。
目次
シロアリとアリは仲間ではなく“全く異なる昆虫”
「アリ」という名前が付けられているシロアリですが、シロアリとアリ(クロアリ)は生物学上全く異なる昆虫として分類されます。
まず、シロアリとアリはエサが違います。
シロアリは木に含まれるセルロースという成分を栄養としています。
家の建材に使われている木材やウッドデッキ、植木などがシロアリによって食い荒らされるのはこのためです。
一方、アリは私たちが食べるような食品を栄養としていて、基本的に木から栄養を取ることはありません。
また、シロアリとアリは卵から成虫になるまでの過程にも大きな違いがあります。
シロアリは、卵→幼虫→成虫という順番で成長し、ほとんどのシロアリは成虫になっても幼虫の時と見た目に大きな変化はなく、卵から孵った時から白いアリのような形をしています。
ただし、巣の中で生殖の役割が与えられている一部のシロアリは、繁殖期になると体が黒っぽくなり、羽が生えて、アリのような見た目へと変化します。
アリはというと、卵→幼虫→サナギ→成虫という順番で成長します。
幼虫の時はイモムシの様な姿をしていて、サナギから成虫になる過程で体が黒く変化し、誰もが知っている黒いアリの姿になります。
さらに、シロアリとアリでは活動する場所にも違いがあります。
シロアリは一生のほとんどを木や土の中で過ごすため、地上に姿を現すことはほぼありません。
アリも土の中に巣を作って暮らしますが、エサを確保する際には地上に出て活動します。
私たちが頻繁にアリを見かけるのに、シロアリを見かけないのはこのためです。
日本で被害が多いのはヤマトシロアリとイエシロアリ
日本には22種類のシロアリが生息していて、大半のシロアリは土壌改良に重要な役割を果たしている益虫です。
その中で害虫と言われているシロアリは5種類で、住宅などの建築物を食害するシロアリは主にヤマトシロアリとイエシロアリと言われています。
【ヤマトシロアリ】
ヤマトシロアリは寒さに強いシロアリで、北海道を除く全国に生息しています。
水分がないと活動できないため、住宅の中でも湿った場所に巣を作り、食べる木材も水分を含んだ柔らかいものを好みます。
ヤマトシロアリはそこまで食欲が旺盛な種類ではないので、被害は比較的緩やかに進行します。
【イエシロアリ】
イエシロアリは寒さに弱いシロアリで、比較的温暖な関東から九州地方にかけて生息しています。
シロアリの中で最も凶暴な種類と言われていて、食欲旺盛で繁殖力が強く、ヤマトシロアリに比べて被害が急速に進行します。
イエシロアリはヤマトシロアリと違って、自ら運んだ水分で乾燥している木材を濡らしながら食べることができます。
そのため、湿気がある場所でしか活動できないヤマトシロアリよりも行動範囲が広く、その分被害が広範囲に及ぶことがあります。
このように、ヤマトシロアリとイエシロアリは、エサとなる木材や行動範囲に違いがありますが、どちらも蟻道を作って移動するという共通点もあります。
アメリカカンザイシロアリとは?
最近は、元々日本に存在していたシロアリ以外にも、海外から運び込まれたアメリカカンザイシロアリによる被害も増加傾向にあります。
アメリカカンザイシロアリは、土の中に巣を作るヤマトシロアリやイエシロアリと違って、乾いた木材の中を食害してトンネルのような巣を作ります。
また温度や湿度の変化の影響を受けにくく、乾いた木材にあるわずかな水分だけで生き延びることができます。
ヤマトシロアリやイエシロアリのように蟻道を作って移動しないため発見が難しく、気が付いた時には被害が深刻な状況になっている場合もあります。
日本のシロアリと何が違う?増えてきた外来種・アメリカカンザイシロアリの被害
まとめ
今回は、シロアリとアリの違いや、日本で被害が出ているシロアリの種類と生態についてお話しました。
シロアリは種類に関わらず土や木の中で活動をする昆虫です。
そのため、初期段階でシロアリが発生していることに気が付くのはとても難しいと思います。
一般的には湿った木材を食害するイメージがあると思いますが、イエシロアリやアメリカカンザイシロアリは乾燥した木材も食べるので、新築でも被害にあう可能性は十分に考えられます。
シロアリの被害を受けたからといって建物が倒壊することはほぼありませんが、耐震性に問題が出る場合があるため、住宅の点検は定期的に行いましょう。